家の近くに借りた畑で、父が育てている夏野菜の収穫が最盛期を迎えている。
曲がりくねったイボイボのきゅうり、先が2股に分かれたごぼう、大きさも形も不揃いの新じゃが、どれも見栄えは悪いが、ほとんど農薬を使わないので、野菜本来の味とみずみずしさが何とも言えない。
思えば子供の頃から、ずっとそんな野菜を食べてきた。
宮崎県から愛知県へ来て4回引っ越しをしている。
アパートの狭い庭先や社宅の軒下など、わずかな隙間があると野菜や花を植えていた父。
いったいどんな想いで育てていたのだろう。
手をかけた分だけ、文句を言わず成長し実を結ぶ野菜。時には仏様に飾り、日頃は近所の方たちの目も楽しませる花々。
ある年、隣のお百姓さんに負けまいと消毒をしてしまった。見た目は立派なキャベツだったが、トゲのある味を母の舌が見破り、2度と食卓に上がることはなかった。
土を耕して種を植え、水をやり草を抜き、葉に付いた虫を丁寧に取り除いてやらなければ実を結ばない。
野菜作りはプロセスの大切さと「必然」を教えてくれる。
それが父の楽しみなのかもしれない。そして、父が作ってくれた野菜は私の自慢でもある。
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