夕飯の支度をしている母から「しょう油が足りないから、隣のおばさんに借りてきて」と頼まれ、走っていた頃が懐かしい。
父が定年まで勤めた会社の配慮で、退職後も住まわせてもらっていた社宅が閉鎖されることになり、昨年の夏に引っ越した。
長年住み慣れた家は、冬はすきま風が吹き、夏は隣の家からいびきが聞こえていた。
40歳を過ぎても近所の方に「真理子ちゃん」と呼ばれることや、時々聞こえてくる噂話には少し抵抗があったが、お互いの背景を知りながら言葉を交わす心地よさがあった。
今は顔と名前と飼っている犬の名前を知っていて、挨拶を交わすだけの隣人が、壁の向こう側に住んでいる。
「やっぱり大宝は、いいなぁ」と感じるのは、昔ながらの近所づきあいができるから。
研修会、勉強会、文化祭など、支店内外に老若男女、様々な過去を持った者同士が共に学び、知り合う場がたくさんある。
初めは緊張していた顔が、お互いのことを話し知り合ううちに、どんどん柔らかくなる。
自分のことを本氣で心配し、叱ってくれる人もいる。
「100年に一度の経済危機」と言われる混沌とした時代。
頼りになるのは、そんな「人の力」。
お互いを知り、良さも欠点も認め合い、力を合わせて前進してゆこう。
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