すぽっと らいと 10月

夢志記

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感謝を忘れると‥‥

 大久保 知明


 ついに、タバコをやめることになった。

自分の意志でやめることが出来る人は一割ほどしかいないらしく、「病院の禁煙外来に行けば、半分の人がやめられる。

俳優の舘ひろしもやめた」と女房に言われ、病院に引っ張られて行った。

やめたほうが健康に良いと知ってはいても、32年間で一度も禁煙したことは無く、「勉強をしたほうが良いと知っていてもやらないのと同じだね」と、また冷かされそうだと思った。病院で先生から「健康保険料を無駄にしないように」と釘を刺され、薬をもらった。
 週明けに伊藤相談役が「本当にタバコをやめたいなら、やめさせてやる」と私の背中を大きくさすり、「はいっ!一本でも吸ったら次々に吸いたくなる」と手荒なおまじないをかけて下さった。

 1日中吸わず帰りに恐るおそる吸ってみると、あれほどうまかったものがまずくなっていた。それ以来吸っていない。「意志が強いね」と女房には結婚して初めてほめられたが、私の意志ではなくおまじないというか催眠が効いているのだ。

実は私は花粉症も同じように治していただいた。
 なぜそうなるかは、理論では説明できないが、伊藤相談役は人を幸せにする力を持ってみえると思う。私は多くの人にお世話になって生きている。しかし「すぐに忘れる」とよく指摘を受ける。その都度恥ずかしいと思うし、ありがたいと思う。自分のエゴの大きさを知り、より人間らしくなれるよう学んでゆく。


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