「経営」と聞くと難しいと思うかもしれませんが、そうではありません。
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』という本がベストセラーになってから、急にピーター・ドラッカーがもてはやされています。ドラッカーはマネジメントを初めて体系化し、その概念や手法の多くを生み出し「経営の父」と呼ばれた人です。
私が若い頃からおもしろいと感じていたのは「経営は人間が行なうもの。
人間が分からない者は経営者になってはならない。
経営者、リーダーになろうと思うなら、人間について勉強せよ」と、彼が一貫して言っているところです。
経営は会社の経営者がやればいいこと、自分には関係ないと思っている人が多いと思いますが、みなさんも自分自身を経営しています。
個人、家庭、地方自治体、国、地球、そして規則正しく動いている宇宙も、経営によって成り立っています。
私たちは学ばなければ我欲が強く、何か良い事はないか、楽して儲かることはないかと、都合の良い事ばかり考えます。
目先の損得は誰でも分かりますが、大抵は上手くゆきません。
人間の質や考え方を変え、正しいことを前向きに実践した結果として、儲かるようにするためには、経営の勉強が必要です。
我々にとって一番身近でプラスになるのが経営の勉強なのです。
経営の三核活動とは
@目的、目標の達成
これを考える前に「目的」と「目標」の違い、言葉の概念を説明出来ますか。
簡単に言うと、目的は終着駅、目標はそこに行くまでの通過駅です。
経営と言うとすぐに金儲けと考えがちですが、それだけが目的、目標ではありません。自分が変化成長することも、経営の目的です。
それは自分で考え、つくらなければなりません。
A内部統制の維持、管理
組織には一定の枠があります。何をやっても良いという訳にはゆきません。
また組織には役割と責任があり、良く機能させるために肩書きがあります。
肩書きが上の人が我欲(エゴ)をむき出せば、下の人も負けずにむき出します。
悲しいですが人間は我欲の塊です。自分の我欲を認め、少しはコントロールしてゆくことが修行です。
責任の重い立場にあるほど、自分の中に強い我欲があることを認め、学んでコントロールしなければ、誰からも信用されず組織が崩れます。
B外部環境への対応活動
今はほとんどの業界で、仕組みよりも価格による同業社間の競争が行なわれ、資本力の弱いところは力で押さえ込まれてしまいます。
それが資本主義の悲しさですが、人間の質は会社の規模とは関係ありません。
一人でも多くの社員がその氣になり、エゴをコントロールすれば、日本一挨拶が良い会社、日本一事故の少ない会社にすることは可能です。
私はそういう会社を目指し、社員教育を経営の柱としてきました。
ますます厳しくなっている外部環境に対応するため、やるべき事は何かを自分たちで一所懸命考え、出来る事から頑張り、実現していってください。
それ以外に私たちが進む道はありません。
個人としても、この三つの項目に当てはめて
@目的・目標はあるのか
A自分自身で決めた事、組織の一員としてやるべき事がきちんと出来ているか
B外部環境の変化に対応出来る自分なのか?
人間として、社会人として、大宝の社員として通用するマナー、行動を身につけているのか(挨拶、言葉遣い、会話など)考えてみましょう。
経営の基本的な活動
@人間に喜びや感動を与える
人に感動や喜びを与えることは、100万円儲けることよりもずっと難しいのですが、それが出来ない経営は絶対に上手く行きません。
「よくお客様に感動を与えよ」と言う経営者がいますが、その元となるのも最初に感動を与える相手は社員です。
感動や喜びがなく、労働条件が悪くて一所懸命働けますか?
本当に交通事故、商品事故を無くそうと思ったら、会社が好きなのか、人間関係の中で感動することがあるのかを見直しましょう。
何らかの感動があり、仲間や仕事や会社が好きな人は、仕事を通じてお客様に感動を与えることが出来ます。
人間に感動を与えることは、永遠の戦いです。
A論理的に体系づけものごとを理解する(させる)
まともなコミュニケーションをとるためには、リーダーがもの事を論理的に体系づけて考え、相手が理解出来るように話す能力が必要です。
例えば安全活動において、保有台数200台で年間事故件数が200件だった時代から30数年間に亘り、なぜ事故を起こしてはいけないのか、どうすれば事故を防ぐことが出来るのかを論理的に体系づけ、考え分かってもらう努力をしてきたから、今日の事故件数まで大幅に減らすことが出来ました。
しかし、それ以上減らすことが出来ないのは、その力が弱いからです。
私が社内で勉強会を行なってきたのは、会社が目指す方向に進む時、規則をより厳しくして社員を力で抑え込むのではなく、もの事を論理的に体系づけて考える力をつけ、なるべく多くの人に主体的に行動して欲しいと思ったからです。
しかし、それに多くの人が甘えすぎたことも事実です。
B規則・規律を守る
ものごとをすすめてゆく時、規則・規律を守ることは不可欠です。
自分で考えてやるか強制的に守らせるかは組織のメンバーの人間性の次元や緊急を要することか否かなどによっても変わります。
Aが不充分な場合はBを強くすることになります。
このように厳しい時代は規則を厳しくすることが必要かも知れません。
C仲間意識を高める 互いに仲良くする
せっかく縁あって大宝にいる間は、仲間意識を持ち、同志として戦ってゆくことが必要です。
自分たちの都合の良いことだけでなく、みんなで力を合わせ、今ある条件を守って行ってください。
自分の人生と仕事のつながりを考え実践しよう
個人の人生も、これまで(過去)が「赤字」だったのか「黒字」だったのか、現在はどうなのか、将来はどうなのか考えてみて下さい。
会社も定期的にデータを出し業績を分析します。
もし利益が出なければ、なぜなのか原因を探ります。そして赤字がずっと続けば倒産してしまいます。
個人も赤字続きのまま、今までと同じ事をやっていては変わりません。
どこに問題があるのか一所懸命考え、より幸せになれるよう考え方と行動を変えてゆかなければなりません。
個人としても社員としても、そういうことを一度考えてみましょう。
経営資源の7Mとは、人、もの、金、時間、空間、情報、方法です。
どれも英語で表すと「M」が入っているので「7M」と言います。
それらを無駄なく活かし切ることが経営の大事なポイントです。
人がやる氣になり、感動するような働き掛けを行なっているのか、人を本当に活かしているのか、車を活かしているのか、倉庫に少しでも沢山商品が入るよう工夫しているのかなど、支店内も家庭も見直してみてください。
また、これから説明する「経営の5課題」という考え方を活かすことが出来なければ、何の作戦も出てきません。
分かりやすくするために、「商品事故をなくす」というテーマに沿って考えてみましょう。
【経営の5課題】
1 持つべき価値観
なぜ、商品事故をなくすのかという哲学、価値観をはっきりさせる
2 組織の課題
誰をリーダーにして、どういう組織で行なうのか。どのような問題を解決しなければならないか
3 何をやるか
今月はコレを主にやるなど、やることを明確にする
4 どのようにやるか
やり方などを考え工夫し具体的にする
5 将来あるべき姿
従来よりも事故を半減させるなど、目標をはっきりさせる。また、それによって何を得たいのかを描く
この5つがバラバラではなく、つながっていることが大切です。
あまり難しく考えず活用してみてください。その氣さえあれば誰でも出来ます。
ただし、その氣になることが一番難しいのも事実です。
「理屈は分かるけど」と行動に移せない理由は、人間は理(論理)で考えて情(感情)で行なう生き物だからです。
何かモノをもらって嬉しいのは一日です。何かで感動することがなければ、まともなことは出来ません。
出来ることから考え、やれるところからやってみてください。
梅雨に入り蒸し暑い日が続いています。
風邪などひかないよう氣をつけてください。今は奴隷社会ではありませんので、嫌なら会社を辞めてもおかしくありません。
しかし、いる間は頑張りましょう。
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