和 合 塾 で 学 ぼ う

テーマ

2004年度 年間目標A

頂いた材料をもとに自分自身を掘り下げる。

伊 藤 塾 長 の 講話

1.学び人生

 約2300年前の思想家であり儒学者である荀子が「学ばない者は人間ではない。ヒトは学んで人間になる」という意味の言葉を残しています。

人間は学ぶことによって、単に生物としてではなく“本当の人間”になるのです。つまり学ばなければ人間としての楽しさを得ることは出来ないということです。  ところが多くの人がそんなことは考えず「今日の生活が出来れば人生がある」と思い、無意識に学ぶことをやめてしまいます。目先の楽しさだけを追い求めていると、たとえ、20歳の若者であっても生気のない顔になってしまいます。「学ばないということは、自分の人生を捨てることなのだ」という覚悟が必要です。

2.自分を守るための「ヨロイ」が自分自身を苦しめる。

 私たちは自分自身の心や精神が傷つくことを恐れ、様々なヨロイを着ています。ヘラヘラと笑ってごまかすのも、突っ張って強そうに見せるのも、いい子を演じるのも、みんなその場の自分を守るためのヨロイなのです。

「まじめでいい人と思われたい」というヨロイは、「突っ張る」というヨロイに比べ本人も周りの人も気づきにくいため厄介です。対人関係において一番都合が良いとも言えるのですが、時間が経てば周囲の人も分かってきますし、何よりも自分の変化?成長を妨げます。

 それはヨロイが厚すぎると、外部からの情報(他者からの指摘、考えるための材料など)をはね返してしまい、自分の頭や心の中に入ってこないからです。また、自分で考えていることも、そのヨロイにぶっかり返ってきてしまうので、自分の意思を外部に出すことも出来ません。自ら作っているヨロイに遮断され社会や会社、周囲の人の変化に気づかず、考える材料をもらっても自分のことすら分からないと、何年経っても成長できず。「浦島太郎」のような状態になってしまいます。

 ヨロイの厚い人は交通事故を起こす危険性も高いのです。

なぜならば人からの指摘や指導を素直に聞けず、自分の考えも表に出さないからです。一方、経営学習会などをきっかけに大きく変化する人もいますが、それは学ぶことで自分のヨロイに気づき、少しずつ薄くしたり透明にすることが出来るからです。そうすると外部が見えるようになり、世の中の流れや会社が進んでいる方向、周囲の人の変化が分かります。

 以前の定例会でお話した「心の傷」が原因でヨロイを着てしまうことが多いのですが、本気で学ばなければ時間の経過とともに年々分厚くなり、ますます外部や人の変化が分からず、迷妄(誰もが「それはおかしい」と言っても、自分だけが「正しい」と頑に思い込んでいる状態)の世界に入り込み、身動きがとれなくなってしまいます。船も船底にカキなどの殻が付くとスピードが出なくなり、エネルギーを浪費してしまうため、定期的に殻を取り塗装をし直します。

人生も同じです。

 「自分の人生を捨てるのは嫌だ。人生を楽しくしたい」と思ったら、学んで自分がどういうヨロイを着ているのかを知り、薄くなるよう努力していきましょう。そして、お互いにヨロイを着なくてもいい人間関係をつくっていきましょう。

3.返ってくる答えははじめから分かっている?

 自分を知り分かること抜きにして自己成長はあり得ません。しかし、自分を掘り下げる時には 

@自分にとって都合が悪いこと。

A自分にとって都合が良いこと。

この両方が出てきます。特に@の自分にとって都合が悪いことの方が大事なのですが、こちらからは目を背け、耳を塞ぎ、逃げてしまいがちです。

 自分にとって都合の良いことも悪いことも受け入れ、ごまかしなく自分を見つめることによって、初めて自分に気づくことが出来るのです。

感謝するということも同じです。

ヨロイに気づき、もの事が分かるようになった分だけ、外部からの働きがけが自分にとってプラスだと感じられるから、その刺激やそれを与えてくれた人に感謝できるのです。ことばだけ並べていても意味がありません。和合塾などの勉強会の場で提供される「材料」をもとに、ぜひ真面目に考えて下さい。

4.同じ張るなら…

 最近、私は「女を張っている」と言っています。「張る」ということばにも色々な意味がありますが、

@根っ子(自分の考え方の元)を広く深くする

Aない中身をあるように見せる

のどちらかで考えると、日頃私たちはAの方で頑張っています。

 たとえば「威張る」というのは中身がないからです。もし威があればみんなが認めてくれるので、威張る必要はありません。虚勢を張るのは本当の勢いがないからであり、「そんなこと分かっている」と見栄を張るのは、中身がない、ものがわからないと思われるのが嫌だからです。

「俺は男だ」と力んだり、欲を張るのも同じです。外見は虎の姿をしていても、中身はからっぽなのが「張り子の虎」です。

 同じ張るなら、自分たちが行っている仕事にもっと胸をはって下さい。

乗り物を操縦する仕事にも色々ありますが、旅客機のパイロットと新幹線の運転士とトラックの乗務員の中で、最も操縦の難しい職業はどれだと思いますか?

 答えは「トラックの乗務員」です。なぜならば自動制御は不可能であり、その人が見聞きした情報をもとに全て自ら判断し、操縦しなければならにからです。そういう難しい仕事を行っているという自覚がなく、自分たちで「自分はダメだ」と思っている人もいるのが残念です。もっと自分たちの仕事に胸を張り、難しいからこそ正しい判断をするために学び、人間性を高めていきましょう。

 学びを捨て人生を無意識に捨てておきながら「何かいいことがないだろうか」と目先の計算ばかりしていても、いいことはありません。人生はそんなに甘くないのです。人にはそれぞれ過去があり、誰もが多かれ少なかれ心の傷を持っていますが、今から将来に向け自分が努力した分だけ、物ごとが分かり人生も拓けます。

 こういうことをみんなで考え実践することで、事故をなくし、会社を元気づけ前進させていきましょう。それによって得られる自分の成長は何物にも変え難い宝物です。外部条件が厳しい時代だからこそ、「あの人が悪い」と文句を言い責任転嫁をしたり、ケンカをしていても仕方ありません。お互いに自分を掘り下げ中身をつくり、自分たちの力で人生と組織の好循環を生み出していきましょう